031 鈴本の権太楼独演会　奥様プロデュースによる病中の名演(10-12-12)

　１１月３０日の鈴本・権太楼独演会のチケット発売は、ぴあや鈴本窓口では
なく、案内に記載の電話で予約する形になっており、発売開始日の１１時にか
けたところ、最後の１枚が今売れてしまって、せっかくかけてくれたのに申し
訳ないと、親身の対応で、何とかするので電話番号を教えてくれと言われ、そ
れから１週間後に、あまりいい席ではないが取れたと、同じ方から電話を頂き、
熱心に１枚を調達いただき、さらに代金後払いという、たいへん気持ちよくチ
ケット購入ができたと喜んでいました。帰り際に追い出し太鼓の音とともに、
出口でお礼を言われていたのが、その声質から電話口の方とわかり、その日の
高座でお弟子さんから、奥様が来られていると聴いていたので、奥様自らがチ
ケットをさばかれ、マネージャとしてこの日の独演会を仕切られていたと知っ
た次第です。
　 独演会冒頭、前座を飛ばして異例の師匠登場で、３日前まで多臓器不全で入
院していたと言う報告。サプリメントの飲み過ぎに、最近興行でトリを任され
ることの重圧が重なり、血液検査で通常２０の数値が６００まで跳ね上がり、
急遽入院となった由。数値は１２０まで下がったが、完治のために来年再入院
をするが、最後に「誰でも病気になりますよ。でも治ります。私は誓いました。
娑婆に出たら、薬物には手を出すな」と締めくくり、予定の２席を熱演されま
す。
　 小権太がすぐに登場して、ジャンボ宝くじ会場の余興で権太楼師が「芝浜」
をやるが、その入場整理券を会場の希望者にジャンケンで手渡すという面白い
企画のあと、おじさん、小権太と続き、１席目で「不動坊」。入院する直前の
赤旗まつりのトリで５０００人による組織ぐるみの盛り上げに苦笑したマクラ
のあと、ご自分では元気がないと前置きされるが、いつものように爆笑の一席
でとても退院直後とは思えない。おさきさんはすでに自分の妻だったという部
分が割愛されていましたが、ＣＤやＤＶＤにもなっている十八番を堪能しまし
た。
　テレビ東京で放送され、ＤＶＤ（「不動坊」も入っている）にもなった番組
「落語の極」の冒頭、「落語には健康な笑いがある。ゆえに健全なものであ
る」という師の言葉がありますが、この日の「子別れ」は、健全な精神の裏付
けによる柔らかな空気が流れ、涙が流れました。最後の鰻屋の場面では番頭を
登場させ、理路整然とした復縁を演出しており、構成的にも隙がない。やはり、
滅多にない鈴本の独演会を飾る１席と思いました。ＤＶＤを見返すと、インタ
ビューの場面で電話の奥様の声と鈴本で拝見したお姿が数秒視聴できます。